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【インタビュー】パリ・オペラ座バレエ団 エルヴェ・モロー
来年3月に来日するパリ・オペラ座バレエ団、エルヴェ・モローの記事がアップされています。先日のオレリー・デュポン(芸術監督)のインタビューとあわせてどうぞ。
エルヴェ・モロー
来春の来日が待ち遠しいパリ・オペラ座バレエ団。オレリー・デュポン監督につづいて、輝けるエトワールたちのインタビューをお届けします。第1弾はアーティスティックな魅力が人気のベテラン、エルヴェ・モロー。前回のパリ・オペラ座バレエ団公演、世界バレエフェスティバルで会場を感動に包んだオレリーとの名パートナーシップが、日本公演『ダフニスとクロエ』で蘇ります!気の合うオレリーと初演した「ダフニスとクロエ」を日本でふたたび夏前に足を怪我し、休んでいたエルヴェ。10月22日から始まるバランシンの「ブラームス/ショーンベルグ・カルテット」にてオペラ座で舞台復帰する。その後の具体的な作品は今のところは未定だが、もうじき年末公演のためのキリアンのオーディションがあるとか。そして年があけたら、来日ツアーのための稽古が始まる。自分に創作された『ダフニスとクロエ』を再び踊れる機会が日本で得られることを、彼はとても喜んでいる。学校時代にスキヴィンの振付でこの作品を踊っているのが、ミルピエとの創作時にとても役にたったそうだ。「このラヴェルの曲は聞いてる分にはとてもきれいでいいのだけど、踊るとなるとカウントが難しくて大変なんですよ。バンジャマンとはこれが初めての仕事だったけれど、彼の動きは僕にとてもフィットするものなんです。アイディアに溢れている彼なので、創作はとてもスピーディに進みました。彼って、振付がより滑らかになるようにと、ダンサーにもけっこう自由をくれるんです。例えば、ポルテの時に最高のポジションのために手の位置を変えていいとか…。気の合うオレリーと一緒だったこともあり、この作品の創作にはとても良い思い出があります 」オレリーと初めて組んだのは、彼のコール・ド・バレエ時代に遡る。『シルヴィア』で主役の彼女と第二幕の舞踏会シーンで踊る予定のダンサーが怪我をしたので、エルヴェが代役で踊る事に。その次は『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』にて。これも代役だった彼が急遽3日で彼女と稽古をして、舞台を共にすることになったというから縁のある二人だったのかもしれない。今や彼女は彼にとってこれ以上ない最高のパートナー。動きの感覚、音楽性など共通する事が多く、二人で溶け合って踊れる関係だという。日本でも、その彼女と舞台を共にする。「バレエ・リュスの『ダフニスとクロエ』は物語を追ったバレエだけど、バンジャマンのものは抽象的です。今の時代にこうしたコンテンポラリーなビジョンは悪くないですね 。もっとも物語の鍵は生かされていて、例えば二人の愛のパ・ド・ドゥや、邪悪な ドルコンの登場、リュセイオンの誘惑、海賊によるクロエの誘拐など物語を知っている人はちゃんと辿ってゆけますよ 」42歳が定年のオペラ座で、彼は5か月前の2018年5月にアデュー公演を行うことを決めたという。彼とオレリーに創作されたサシャ・ヴァルツの『ロミオとジュリエット』を演目に選び、そのパートナーはもちろんオレリーだ。前回の来日ツアーでの『椿姫』では、特別な時間を彼女と過ごせたというエルヴェ。今回の『ダフニスとクロエ』も、彼のダンサーとしてのキャリアにおける素晴らしい思い出の1つとなるに違いない。バレエ・ファンなら、その瞬間に居合わせられる幸運は逃したくない。インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)
来春3年ぶりの来日を果たすバレエの殿堂、パリ・オペラ座バレエ団。待望の日本公演までの間、パリ在住のジャーナリスト、濱田琴子さんによるインタビューをシリーズでお届けします。第1回はいま話題の中心、新芸術監督のオレリー・デュポンが語る、これからのパリ・オペラ座バレエ団について。若手たちの中に、未来のエトワールにふさわしい、多くの才能を見出しています。8月1日、芸術監督に就任したオレリー・デュポン。新シーズン開幕のガラ公演で美しいモノクロームのドレスを着てゲストを迎え入れる彼女の姿が、フランスのマスコミを賑わした。すっかり新しい肩書きが板についたようだ。「パリ・オペラ座というのは、クラシック・バレエにおいて卓越したカンパニーであるべきなのです。私による2017/18年のプログラムにはクラシック作品を少し増やします。そしてコンテンポラリー作品にもオープンであり続けるので、これまでまだ踊られたことのない振付家の作品を加えます」。このように思い描くパリ・オペラ座バレエ団におけるエトワールは、クラシックもコンテンポラリーもどちらにも優れた完璧なアーティストでなければならない。両方を踊れるのは、知的な豊かさの証明だと語る彼女。あらゆるタイプのダンスを踊りたいと思う欲の持ち主を期待し、また振付家、観客、同僚などをリスペクトできる、人間的にも教育されていることをエトワールの資質としてあげる。「私にとって大切なことは、エトワールは長いキャリアを通じて、優れたダンサーでなければなりません。今だけ、というのではなく。だから任命する私は、ビジョネアである必要がありますね。すでに若手の中に、素晴らしいダンサーを見出しています。これから遠くない時期に複数のエトワールが引退することは、まだ先のこととはいえ、これは若いダンサーたちにとって信じられないほどの好機であり、私にも良いタイミングといえます」引退後外からオペラ座を見ていたとき、ヒエラルキーが尊重されず、またオペラ座がカンパニーではなくグループになってしまったという印象を受けていたという。そして舞台に立つべきエトワールたちが配役されないことの心の痛みにも思いを馳せていた。公式発表された就任コメントの中で、思いやり、優しさのある芸術監督を目指すと語ったオレリー。それは具体的にはどんなことなのだろうか。「例えば、自分の好みでないダンサーを配役しないというようなことはしません。人間をチェスの駒のように動かすようなことは、私には考えられません。今持っている権力を対人間に使うのではなく、ダンサーにとって良いと信じることをオペラ座にもたらすために発揮してゆきます。あらゆるダンサーがクオリティの持ち主なのだから、それを生かしてゆき、思ったことがあれば隠さず彼らに伝える…彼らにたいして正直でありたいと思っています」前芸術監督バンジャマン・ミルピエがリハーサル・スタジオの床を張り替えることを財政援助者もみつけて実現したことを彼女は評価している。彼が着手したメディカル・チームの結成については、ダンサーの怪我に即対応できる体制をより整えるべく、キネとMRI 検査の結果を読み取れる優秀な女性をプラスするそうだ。古典大作は体の痛みなしには踊れないことを体験してきたエトワール だからこその発想だろう。頼もしい芸術監督が率いるカンパニー。パリ・オペラ座バレエ団がますます輝きを増しそうで、楽しみである。インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)